BOURBON STREET

Step 25    第25回神戸ジャズストリート昇降記

堀 晃 (ODJC会員)

 神戸ジャズストリートは今年でついに四半世紀を記録した。
 たいしたものだと思う。
 たいしたものだが……こちらの体力はどんなものか。
 昨年は4人組で長いレポートを書きましたが、今年はあまりプログラムにしばられず、気の向くままに坂道を歩くことにしました。
 したがって、まとまりのない点描と雑感になります。

 第1日 2006年10月7日

 パレード

 風があり雲の動きが急で、11時前まで時々小雨が降る天気。
 心配していたら、パレード直前でぴたりと止み、晴れてきた。
 去年もこうだった。末廣光夫さんの神通力である。
 午前11時パレードスタート。
 今年も消防音楽隊が「露払い」で先に出発。
 ジャズファンの多くはその後から動き始める。

parade

 先頭右側で先導する「若いおまわりさん」、今年の人はやや強権的で、「歩道に上がって!」を連呼、途中から警笛を吹きっぱなし。
 マーチング・バンドのリズムに合ってればいいのだが、ちょっとなあ……。
 次はジャズ好きの人に当たるといいが。

 「古い十字架」と田中邦衛

 ぼくはクラリネットが好きなので、まず最初は神戸女子大学教育センターで北村英治さん。秋満義孝トリオ+大西教文(g)、ヴォーカルが細川綾子さんで、これは神戸JSの看板みたいなグループ。
 「古い十字架」について北村さんが披露したピソード。俳優の田中邦衛さんが役者を続けるかどうか迷っていた頃、北村さんの演奏でこの曲を聴いてつづける気力が湧いたという。年代は(話の前後の事情からたぶん)昭和30年代半ば。
 ぼくは勅使河原宏の『おとし穴』で「殺し屋」で田中邦衛に注目した。つづいて岡本喜八『どぶ鼠作戦』の上等兵役ですっかりファンになった。昭和40年、新阪急ホテルの喫茶室でコーヒーを飲んでおられるのを3メートルほどの距離からお見かけしたことがある……などと細かいことまで思い出す。「古い十字架」は田中邦衛を殺し屋役として目覚めさせた不思議な曲ということになるのだろうか。

 デジカメ

 クロスへ移動してニューオリンズ・レッドビーンズTonTon森朋子さんを聴く。
 風間晶世さんのクラはこういうイベントでしか聴けない。
 広いホールはそうだが、ライブハウス会場にも、すべての演奏会場に今年から「録画・録音・写真撮影・携帯電話禁止」の看板が目立つように立ててある。

board

 ホールでは最初に「撮影しているのは公式の記録係だけですから」とアナウンスもあった。
 ということで、今年から演奏会場ではわがデジカメを封印した。
 が、気づかないのか、撮っている人は結構多く、やはりストロボが気になる。
 ぼくは今までも「ストロボは使わない」「シャッター音はむろん切る」「後ろの人の迷惑にならぬよう注意する」を3原則としてきたのだが。
 たぶん……コンパクト・デジカメの普及がある臨界を超えたのだろう。カメラに慣れない人がコンデジを使うと、少し暗い場所だと自動的にストロボが発光する。広いホールでのストロボは意味ないのだが、絶えず不規則にストロボがあちこちで光るの気になる。
 細かく注意するのもお互い愉快な気分ではないだろうし、難しいところだ。
 以後の写真はすべてパレードか演奏後に許可を得て撮ったもの。
 クロスから神戸外国倶楽部へ移動。
 秋満義孝さんのグループをバックに花岡詠二さんとエンゲルベルト・ローベルさんの2クラ・セッション。
 ローベルさんは、予定していたスエーデンからのトリオのバスクラが、昨今の飛行機事情で機内に持ち込めず断念、替わりに来たゲストという。クラ好きのぼくには嬉しい来日である。

Lobel
パレードで、A. トロメロンと

 ドイツ人だが、ともかく陽気で色々なパフォーマンスを見せたり、なかなかのエンターテイナー。ソプラノと持ち替えたり、このへんも花岡さんと似たタイプなのかな。
 アーティ・ショウのナンバー中心に楽しいステージだった。

 夕べの祈りのあとビール

 15時からはバプチスト教会へ。
 ヨー・キムラ・トリオ+後藤雅弘さん千香さんを聴く。
 後藤さんは今年の全日本ディキシー・フェスにゲスト参加で大活躍、今年からは神戸JSのレギュラーになりそうで、ますますクラリネットが充実する。
 シンシア・セイヤーさんや曽我清隆さんも加わって賑やかなセッション。
 そして、引き続きニューオリンズ・ラスカルズの登場。
 今年はジェフ・ブルさんが参加。
 毎年、第一日の最終ステージはここで河合良一さんのクラリネットを聴くことになっている。
 <夕べの祈り>で敬虔な気分になったところで、ジャズ友諸氏と坂道を下ってビールを飲みに行く。
 メンバーは昨年のレポートを書いた<JAZZ四人組>である。
 Fさんが「二千円で食べ放題飲み放題」という店を探してきた。
 料理はともかく、この「飲み放題」は値打ちものであった。
 結果として、2名は勝ち組、2名はわずかながら負け組。誰がどちらかは自明のことなので書きませんが。

 第2日 2006年10月8日

 パレード

 快晴、秋晴れ。去年も2日目はそうだった。
 パレード2日目はメンバーが少し増えた様子。
 先頭のおまわりさん、今日は笛は吹かず、ハンドスピーカーを持っていたがほとんど使わなかった。これでなければ。

parade

 北野坂の中ほど、「MIDNIGHT SUN」前のスペースには、毎回、バンジョーを中心とするメンバーが演奏しながら、パレードの来るのを待ち受けている。
 ここで「美人」バンジョーが演奏中。

aoki

 シンシア・セイヤーさんかと思ったが、髪の色がちがう。
 よく見たら、なんとディキシー・キャッスルの青木研さんであった。
 パレードが到着。
 ここでしばらく合同セッションが繰り広げられる。

parade

 そして、最後は「聖者の行進」。

parade

 本日は河合良一さんも参加して、ODJCの誇る4バンドのクラリネット風間晶世さん、河合良一さん、小林昇治さん、佐藤大輔さんが並び、うしろにローベルさんがつくという豪華な顔ぶれであった。

 清水万紀夫と高橋伸寿

 昨日聴けなかったクラリネット、最初は「ソネ」へ1年ぶりに清水万紀夫さんを聴きに行く。川瀬健トリオをバックに「オータム・セレナーデ」。やっぱり素晴らしい。
 2曲のあと登場したのがヴォーカルの高橋伸寿さん。まったく初めて聴いたのだが、こんな正統派クルーナーが日本にするとは迂闊にしてまったく知らなかった。
 最初の曲「ご存じの方いらっしゃいますか? 知ってらしたら相当なご年輩」といわれたが、確か「チャタヌガ・シューシャイン・ボーイ」? 「東京シューシャイン・ボーイ」より古いヒット曲のはず。つづけてこれまた懐かしい「マンハッタン」。……「今年で71歳になりまして……」に、会場、エーーーッという声。ハンサムだし、ものすごく若々しい。東京はやっぱり層が厚いなあ。いずれ探して聴きに行くことにしよう。
 むろん清水さんの歌伴も素晴らしい。
 このステージがあまりによかったので、つづけて清水万紀夫さんを聴くことにした。
 15分後にオリエンタル・ホテル4階の「ザ・バー」である。
 北野坂を一気にのぼり、異人館の並ぶなかをホテルに向かう。早足でこれは、かなりきつい。3分遅刻だが、最初は松本マリ・トリオの演奏だったので、清水さんの演奏には間に合った。ビール飲みながら、ひきつづき戸田裕美さんのヴォーカル。

 豪華メンバー

 下りはゆっくり歩いて、神戸女子大教育センターへ。
 ふたたび北村英治さんのグループ。
 秋満義孝トリオをバックに、原田靖(tb)、北村英治(cl)、原田忠幸(bs)がフロントに並び、ドラムが猪俣猛という、信じられないような豪華メンバーである。猪俣猛さんは神戸JS初登場。
 キャンディー浅田のブォーカルも2曲。
 最後のドラム・フィーチャー「シング・シング・シング」は大喝采であった。

kitamura

 それにしても北村英治さんの人気はすごい。
 演奏後もサインを求める長い列。去年の終了後の路上でも見た光景だが、丁寧にサインし、にこやかに握手に応じられているのが印象的だった。

 JAZZ STREET

 ところで、昨夜ビールを飲んでいるとき、チラシやプログラムでお馴染みの「KOBE JAZZ STREET」の銅板はどこにあるのかが話題になった。
 これについては2003年6月に当時の「副大使」二神さんと北野坂を歩いて確認したことがある。
 北野坂の中山手通から北野通の間、両側に3ヶ所ずつ、計6ヶ所。それに三宮北側の広場に1枚あったと記憶している。
 で「JAZZ四人組」で広場をウロウロしてみたが見当たらない。記憶違いだろうか。
 北野坂の6枚は確認できた。

plate 

plate

 ただ、今は長方形の敷石に埋められている。3年前は円形に石が並べられた、いかにも石畳という雰囲気だったが、工事のたびに、安直な方向に変わっていくのだろう。
 プログラムの写真は今や幻のプレートである。

 いよいよ大詰め

 毎年のパターンで最後はバプチスト教会へと、北野坂をのぼっているところで、CROSSでの出演の終わったT.U.T.エキスキャリバーズの皆さんとばったり。

TUT

 そういえば去年は聴いていない。
 最後は「DAY BY DAY」でレッドビーンズと出ることになっている。
 こちらも面白そうだなと、方向転換、北野坂をくだる。
 ソネではマグノリア・ナテュラル・フレイバーズが熱演中。
 狭い会場だが、ありがたくも最前列に補助椅子を出していただき、最前列カブリツキ、栃木からゲスト参加のテナーを50センチで聴けた。
 こういう熱気のある会場もいいなあ。
 T.U.T.エキスキャリバーズ……アメリカン・フォークは神戸JSでは異色だが、同世代だけに、やっぱり懐かしい雰囲気だ。珍しくも「唯一の日本語ナンバー」という「酒と泪と男と女」がなかなか聴かせた。
 そして最後はニューオリンズ・レッドビーンズ登場。
 エキスキャリバースとはキーが微妙に違うということで「共演」にはならなかった。
 レッドビーンズ、今回はピアノに早稲田出身の上山実さんが参加している。力強くキレのいい演奏で、これからの活躍が期待される若手である。
 TONTON登場。TONTONは新潟でも活躍していて、信頼を置いているピアニスト・深津さんを新潟から連れてきた。ゲスト多彩である。

ikemoto
上山さんとレッドビーンズの池本さん

 TONTONのヴォーカルで「セントルイス・ブルース」、盛り上がるなあ。
 アンコール含めて、終演は17時20分であった。

 神戸の坂道

 終演後、待ち合わせのために北野坂と中山手通の交差点でしばらく風に吹かれていた。
 暮れていく坂道をジャズファンや一般の観光客に混じって、楽器を抱えた出演者が歩いてくる雰囲気がいい。

hightime

 帰京の用意をしたハイタイム・ローラーズの皆さん。
 今回聴けなかったクラがハイタイムのタイロン安在さんと、昨日のみ出演の鈴木直樹さんであった。

 とろこで、末廣さんの外国倶楽部での話。
 「ジャズストリートは演奏会場をハシゴするところによさがあるのに、ここはなかなか動かない……といったら『もう25年になるんですよ』と反論されてしまった」
 自慢ではないが、ぼくの場合、同じ会場でつづけて聴いたのは、最後の「DAY BY DAY」だけであった。
 では、この2日間でどのくらい歩いたのだろう。
 google mapを使って概算してみると、
 1日目4.5辧■夏目6.2辧計10.7辧
 ウォーキングを趣味にしている方から見ればたいした距離ではなさそうだが、何しろ坂道である。
 北野坂については、中山手通〜異人館通近くを8往復している。
 その後、特に痛みもないから、まあ机に向かっていることの多いおっさんとしては、健脚の部類に入るであろう。
 来年は万歩計をつけて、もう少し正確なデータを計ってみよう。
 そのためにも、日頃から歩きましょうね、神戸JS参加の皆さん。

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